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マネジメント ダイバーMANAGEMENT DIVER



【第03回】新製品開発:
フロントエンド活動(アイデア開発から製品定義)のマネジメント

Henrik Florén と Johan Frishammar1は、組立製品の新製品開発におけるフロントエンド活動(アイデア/コンセプト(以下、I/C と呼ぶ)開発から確証の得られた製品定義)に焦点をあて、フロントエンド活動の包括的枠組みの提示し、多くの示唆を提供しています。


Henrik Florén is Associate Professor of Industrial Management at the Center for Innovation, Entrepreneurship and Learning Research (CIEL) at Halmstad University, Sweden.
Johan Frishammar is Professor at Entrepreneurship & Innovation and centre director for Promote at Luleå University of Technology, Sweden.

組立製品のフロントエンド活動の包括的枠組み

(1)I/C 開発(development)
フロントエンドの冒頭の活動、次の二つの活動からなる。
  (1a)I/C リファインメント(Refinement) 
I/C 開発に重要な、技術的内容、エネルギー及び方向性を提供する活動
  (1b)I/C スクリーニング(Screening)
査定と評価によって製品のアイデア/コンセプトの開発をコントロールする活動
(2)I/C アラインメント(Alignment) 
次の二つの活動からなる。
  (2a)I/C アラインメント(内部)(Alignment(internal)) 
新生するアイデア/コンセプトが企業の戦略や内部オペレーションに適合するようにする活動
  (2b)I/C アラインメント(外部)(Alignment(external)) 
平行して、そのアイデア/コンセプトが企業の外部環境との適合を達成するものを探し求める活動
(3)I/C 正当化(Legitimization) 
I/C 開発を、社会的・政治的な要因や問題によって失敗させられることから保護する活動

フロントエンド活動の成果
フロントエンドステージの成果が「確証の得られた製品定義」であると主張します。
製品定義のコアは製品コンセプトで、写真、図面、3次元モデルまたはモックアップのかたちで一般的に視覚化されます。さらに新しい製品のアイデアの説明に加えて、その主要な機能と顧客の利益を表記します。ターゲット市場、顧客ニーズ、製品の仕様だけでなく、製品のポジショニングと製品要件に関する情報も含まれるという理由からです。

経営者への示唆

以下に、フロントエンド活動の陥りやすい落とし穴とキーとなるマネジメント対策を示します。
1.I/C 開発
(1a)I/C リファインメント
Common Pitfalls
陥りやすい落とし穴
Key Managerial Countermeasures
キーとなるマネジメント対策
Spending time on apparently failing ideas/conceptsアイデア/コンセプトの失敗に費やされる時間(I,R)

Spending too little time on ideas/concepts with high potential
高いポテンシャルのアイデア/コンセプトに費やされる時間が少な過ぎる(I,R)

Insufficient uncertainty reduction
不十分な不確実性の低減(I,R)

Insufficient attention to customer needs
顧客ニーズへの不十分な注意(I,R) 

Using in-house competences only
インハウスの能力のみを使う(I,R)

Too much formalization of I/C refinement
形式化し過ぎた I/Cリファインメント(R)

Insufficient assessment of technical differential advantage
技術的な差別的優位性の不十分な評価(R)
Collaboration with customers & formal market research
顧客とのコラボレーションと公式な市場調査(I)

Collaboration with lead users & informal market research
リードユーザとのコラボレーションと非公式な市場調査(R)

Unstructured information search by individuals
個人による非構造化情報の検索(R)

Structural information search guided by the firm
企業によってガイディングされた構造化情報の検索(I)

Cross-functional collaboration
クロスファンクショナルなコラボレーション(I,R)

Cooperation with other external actors, e.g. suppliers and higher educational institutions
外部アクターとの連携(例:サプライヤーや高等教育機関)(I,R)

Ensuring probing and learning in the development team
開発チームでのプロービングや学習を確保する(R)

※リードユーザとは、将来一般的になるであろうニーズの保持者のこと。(川上2より)

(1b)I/C スクリーニング
陥りやすい落とし穴 キーとなるマネジメント対策
Screening too hard (killing “false negatives”)
ハード過ぎるスクリーニング(偽陰性をなくす)(I,R)

Screening too soft (failing to kill “false positives”)
ソフト過ぎるスクリーニング(偽陽性をなくす)(I,R)
Informal discussions among team members and/or a formal cross-functional review committee that conduct
チームメンバー及び/または実施されるクロスファンクショナルレビュー会とのディスカッション
-Business analysis
-ビジネス分析(I,R)
-Feasibility analysis
ー実現可能性の分析(I,R)
-Technology assessment
-テクノロジーアセスメント(I,R)

Collaborative learning
協調学習(R)

Use of innovation intermediaries
イノベーションの仲介者の活用(R)

2.I/C アラインメント
(2a)I/C アラインメント(内部)
陥りやすい落とし穴 キーとなるマネジメント対策
Failing to capitalize on core competences
コアコンピタンスを活用するために失敗する(I,R)


Failing to link I/C development to business strategy & product strategy
事業戦略と製品戦略にI/C開発をリンクさせることに失敗する(I,R)

Overemphasizing project-specific criteria and underemphasizing issues of strategic fit
プロジェクト固有の条件を誇張し、戦略的適合の課題を十分に強調しない。(I,R)
Product portfolio planning
製品ポートフォリオプランニング(I)

Model new capabilities & business models, e.g. desorptive capacity
モデルの新機能とビジネスモデル(例:脱着能力)(R)

Investigate potential for idea & concept commercialization
アイデアとコンセプトの実用化の可能性を調べる(R)

(2b)I/C アラインメント(外部)
陥りやすい落とし穴 キーとなるマネジメント対策
Failing to incorporate knowledge about competitive product offerings
競合製品についての知識を取り込むことに失敗する。(I,R)

Insufficient understanding of technological development
技術開発の理解が不十分。(I,R)
Environmental scanning activities
環境のスキャン活動(I,R)

Benchmarking
ベンチマーク(I)

Partner arrangements with other firms
他の企業とパートナー契約(R)

Build absorptive capacity
吸収能力を構築する(R)


3.I/C 正当化
陥りやすい落とし穴 キーとなるマネジメント対策
Rejection of good ideas due to a lack of legitimization
正当化の欠如に起因するアイデアの拒絶(I,R)

Bad ideas pushed too far for political reasons
悪いアイデア遠すぎる政治的な理由(I,R)
Support from senior management
上級管理職からのサポート(I,R)

Cross-functional collaboration クロスファンクショナルコラボレーション(I,R)

Leadership provided by product champions or heavyweight project managers
製品チャンピオンまたは重量級プロジェクトマネージャーが発揮するリーダーシップ(I,R)

以上、Henrik Florénら1の表1「コアフロントエンド活動の陥りやすい落とし穴と経営対策」より

ここで、(I,R),(I),(R)は、適用できる開発タイプを示します。
I:インクリメンタル開発、R:ラディカル開発、を指し、

インクリメンタル開発:部品設計と全体製品設計の両面で既存の技術的知識を維持・強化する開発
ラディカル開発:部品技術と製品設計アーキテクチャの両方を大きく変える開発

を意味します。(藤本ら3「効果的製品開発パターンの産業間比較」「製品ー部品間の相互変化」より)

【参考】製品開発論におけるフロントエンド活動の日本の先行研究

川上2は、マーケティングとR&Dの統合マネジメントに関する研究の中で、実際の開発現場に目を向け、成熟市場において次々と新製品を生み出している日本の白物家電メーカーが、顧客情報をどのように利用して新製品開発を行っているのかを検討し、発見事項として次の4つを挙げています。
  1. 顧客情報は、製品アイデアやコンセプト、仕様などの決定に使われるだけでなく、開発メンバーの行動を促したり、組織内でコンセンサスを形成するといった組織のマネジメントのためにも利用されうること
     
  2. 組織レベルでの顧客情報の利用には、職能横断的な背景知識の保有やタスクへの関与が好影響を与えうること
     
  3. 上位マネジャーが顧客情報に対して支持的な姿勢を持つことが重要であること
     
  4. 顧客情報の利用と新製品開発の成果との関係は、製品の革新性の程度によって異なりうること
さらに、実践的インプリケーションとして、「顧客情報の組織的利用のための統合的マネジメント」挙げ、市場調査結果を開発メンバーの動機づけや行動促進や組織内の合意形成に利用するために、統合的なマネジメントを行うことの重要性を強調しています。例えば、
  1. 顧客情報の内容に沿って関連するマーケティング戦略を綿密に練り上げ、他部門を説得する材料を揃えること
     
  2. 各部門の下位目標よりも市場調査の結果から得られた顧客の声を優先するための動機づけとして、部門横断的なマーケティングの勉強会や研修を行うこと
     
  3. 開発の意志決定に実質的に役立つ市場調査を技術理解力のあるマーケターが行い、顧客情報の利用可能性を高めること
このように、顧客情報に内在する不確実性や限界を認識した上で、組織全体のコンセンサスが得られるよう、他部門を巻き込んだ統合的なマネジメントを行わなければならないと述べています。

参考文献

  1. Henrik Florén and Johan Frishammar, "From Preliminary Ideas to Corroborated Product Definitions: Managing the Front End of New Product Development", California Management Review, Vol. 54, No. 4, Summer 2012, pp. 20-43
  2. 川上智子著「顧客志向の新製品開発(マーケティングと技術のインタフェース)」
    (2005)有斐閣
  3. 藤本隆宏、安本雅典編著「成功する製品開発(産業間比較の視点)」(2005)有斐閣

マネジメントダイバー 第03回 2013.09.12


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