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マネジメント ダイバーMANAGEMENT DIVER



【第08回】オンラインコミュニティによるブランド構築、共創とその成果
ーその3 「クリエイティビティを生むコミュニティ育成の鍵は何か」


ディスカッション

コミュニティの中では、人々はお互いを信頼し始めて、コミュニティ意識(連帯感)は、時間の経過とともに高まっていきます。成功するオンライン共創環境のための最初の要件は、 参加している人々同士が、一般的な相互接続、興味、そして趣味を見つけることができるように、彼らの間で社会的、探索的な会話を奨励し促進することが必要です。 これらの非合目的な会話が、参加者間の相互接続性(connectivity)と信頼の形成のためには不可欠です。参加者間の信頼が発展すると、彼らはブランドについての提案やアイデアを共有する大きな意欲に繋がります。 従って、参加者の間で形成された初期の信頼は、コミュニティとブランドに向けた信頼へと徐々に変換されていきます。

会話が発展するにつれて、人々はブランドに反応し(モデレーターによって説明表現されることによって)、出現している実体であるコミュニティ自体に一体感を感じ、さらなる参加を働きかけます。そして、ブランド・インティマシーの感情が開発され成長していきます。このことは、消費者-ブランドリレーションシップには、コミットメントと高い信頼が必要であるとするフルニエの論文に沿うものです。また参加者は、いくつかのケースでは、ブランド・インティマシーが高まる影響として、ブランドの所有意識を感じ始めます。


図1.ブランドコミュニティの参加者の出現と成果の概念図(Nicholas Indら1のFIGURE2「Emergence and Outcomes of Participation」の時間軸を省き、Nicholas Indら1のFIGURE1「The Co-Creation Space」*13の図を重ね合せ、さらに補足説明を追記したもの)

より多くの参加を支えるものは、公正な相互依存の認知です。もし組織が耳を傾け行動し、フィードバックを提供することを怠った場合、人々はすぐに苛立つでしょう。 彼らのほとんどは、組織が耳を傾けてくれていると感じて、参加者は提供します。このことはアクティブなモデレーションの必要性を示しています。 コミュニティの中で質問を問い掛け、参加者のアイデアをフォローアップしたり、明確化したりするモデレーターの役割は、コミュニティのクリエイティブなアイデアづくりには重要です。

またいくつかの議論では、消費者との効果的な共創には、最もクリエイティブな個人らを見つけることが必要であるとしていますが、本研究では、クリエイティビティは、動機づけられた人々が積極的に相互接続する集合的努力によって起因することを示しました。クリエイティビティは、人々が、知識を共有し、アイデアを実験し、さまざまな視点を明らかにするために、お互いを刺激し、共同で新しい概念を形成し進化させることができ、安全で信頼の環境を必要とする社会的・文化的なプロセスです。


*13  共創空間(The Co-Creation Space)
共創は、組織と個人が対面とオンラインの相互作用を通して出会う、相互接続された空間で行われる。これは、人々がアイデア運動に参加して、ブランドがディスカッションされ開発される一つの流体空間です。 もちろん、重複領域の外側の円で示されるように多くの個人は、組織とは積極的に相互作用しません。

(Nicholas Indら1より)

マネジャーへのインプリケーション

マネジャーは”文化的な織物”の一部のように
マネジャーは、参加者が徐々に活躍することができる信頼の環境を形成し、それによってブランド・インティマシ-意識の高まりを作る必要があります。 これを実現するために、コミュニティをコントロールする誘惑から逃れ、代わりに参加者が、他者との会話や活動において自由にエンゲージできる、快適性と所属感を感じるような柔軟な環境を作くる必要があります。つまり、コミュニティを手段として利用し最終アウトプットにフォーカスするより、むしろ、質問を問い掛け、参加者の話をよく聞き、学ぶために、自らを"文化的な織物"の一部(part of the “cultural fabric”)として貢献する必要があります。


フィードバックが鍵
生産的なコミュニティをクリエイトするためには、参加者は、自分自身とブランドの間に公正な相互依存関係があると感じたときにのみ、参加、インティマシー、そして所有意識(ownership)の好循環が生じることを認識する必要があります。 このことの鍵となるメカニズムがフィードバックです。参加者は、自分の貢献についての、正確ではっきりとしたフィードバック(適切なタイミングに届けられる)を受けてはじめて、 評価されていると感じ、彼らが求める充足感を感じます。


支援プラットフォームと参加者スキルを開発するメカニズムの開発
高い度合いのインティマシーと強い所有意識を持つ参加者は、ブランドの目と耳になることで、ブランドとの関与を増やし、”ブランド大使”としての役割を果たす意志を持っているので、マネジャーは、彼らをサポートする必要があります。このことは、彼らのタスクを容易にすることができる支援プラットフォームを開発する、および/またはオープンにするだけでなく、彼らが効果的な貢献を行うために必要なスキルを持つように、彼らをトレーニングするメカニズムを開発する必要性も意味しています。


必ずしも"クリエイティブな"個人を募集する必要はない
オンラインコミュニティを募集するとき、必ずしも"クリエイティブな"個人を募集する必要はありません。私たちのコミュニティの参加者は、誰もがクリエイティブであることができると感じ、彼らはクリエイティビティとは集合的な努力である、つまり、お互いを刺激し、一緒にアイデアをクリエイトする多様な個人間の結果であると主張していました。この観点から、共創プロジェクトにおいてエンゲージする人を決めるとき、最もクリエイティブな個人を選択することは全く重要ではありません。その代わりに、生産的なアイデアを刺激するためには、共創プロセス自体の適切な管理が重要です。


参加型リーダーシップスタイルの開発
共創のアプローチを採用すると、組織のインサイドとアウトサイド間の多くの障壁を取り除くことができます。消費者は、ブランド構築と製品・サービスのイノベーションに貢献するために、招待されます。マネジャーには、組織の強みと弱みを認識し、インサイダーよりも優れたインサイトとソリューションを持っているかもしれないアウトサイダーを受け入れる謙虚さが必要になります。つまり、共有を強調し、消費者の貢献を受け入れる、マネジャーの参加型リーダーシップ・スタイルが開発されるべきことを示唆します。マネジャーとモデレーターは、オープンマインドで共創にアプローチする必要があり、ブランドは、より参加的になるので、意思決定プロセスは、より協議的や集合的になります。 もはや、ブランド構築を考える際に消費者のニーズや欲求を考慮することだけでは、全く十分ではありません。消費者自身がブランドについて考え、組織の実現のためのすべての段階で消費者が組み込まれる必要があります。マネジャーの責任は増加しますが、それはまた、リーダーシップのより参加型アプローチを形成するための機会でもあります。

(以上、Nicholas Indら1"Building Brands Together: Emergence and Outcomes of Co-Creation"より)


【参考】なぜ人は無償で貢献するのか

ユーザー貢献システムのの大半は、貢献者たちに金銭報酬をいっさい支払わない。支払うことで、協力と信頼の感覚が損なわれ、参加が激減する可能性もある。むしろ貢献者は、人間本来のモチベーションに突き動かされているのだ。無意識に、何のモチベーションもなく貢献していることさえある。

意識されない貢献
人が別の目的でやったことの副産物として、その人のリソースやデータを収集するシステムがある。アマゾンでの購買は、推奨エンジンに自動的に貢献することになる。これは、ほかの顧客の評価や購買意思決定に基づいて商品を紹介する機能である。

実用的なソリューション

ユーザーにとってその場の使い勝手がよいために使われているユーザー貢献システムがある。たとえば、デリシャスというサイトは、ユーザーが自身のお気に入りのウエブサイトを登録したブックマークを整理するのに大変便利である。そのようなブックマークを集計することで、その副産物として、他の人々にとっても有益なウエブサイトへのインデックスが作成される。

社会的報酬
他者との交流というメリットを提供しているシステムは多い。共通の関心の持ち主たちが集まるコミュニティに参加したり、潜在顧客を探したり、恋人を見つけることが、フェースブックやリンクトインといったSNSの推進力となっている。

名声
人々に認められたという願望、たとえばアマゾンの「ベスト1000レビュアー」の認定など、仲間から賞賛されたいという願望が貢献のきっかけになることもある。ウイキペディアの各項目には著者の名前は記されないが、他の貢献者からの尊敬が得られる。

自己表現
ユーザー貢献システムの多くは、自分の考え方や意見、創作表現を公開し、できればリアルタイムでユーザーからのフィードバックを得たいという個人的な願望によって拡大している。このことは、ユーチューブの600万本の動画がまさしく証明している。

利他主義
人がネットに嬉々としてレストラン評を書き込むのはなぜだろう。その意見を参考にほかの人たちがその店を訪れるようになれば、予約を取るのが難しくなるかもしれないというのに。しかし、周辺の人たちが夕食に出かける際に参考にしてほしい、素晴らしいレストランのオーナーに報いたいと思う人たちもいるのである。また、ただ単に真実を知らせたいという人いる。

(以上、Scott Cook12「なぜ人は無償で貢献するのか」より)


【参考】コミュニティデザインの原則

集団の知の陥穽(かんせい)

衆愚という言葉があるように、集団で思考することがいつもよい結果につながるとは限らないと昔から警告されてきた。社会心理学では、集団行動の非合理性について、集団行動のさまざまな非合理性が報告されている。典型的なものとして、次のような現象が知られている。

●グループシンク:グループとしての意見や決定に疑問を感じず、むしろそれを確信し、適切なものであると思ってしまう。
●沈黙の螺旋(らせん):独自の意見をもつ人たちが沈黙してしまう現象。まわりをみて自分が少数派だと思うときは沈黙を守るという行為が、今度はほかの人々への同調圧力を生み出す。裸の王様の例がこれに相当する。
●分極化(polarization):グループとしての意見は個々人が考えているよりも極端でリスクの高いものに傾きやすい。
●根拠のない流言:流言変容の法則性として、単純化(細部を取り去って簡単にする)、強調(人々が自分にかかわりのあるところだけを勝手に強調する)、同化ないしは合理化(人々が先験的にもつ偏見やステレオタイプに従って内容の改変を行う)などの現象がある。

コミュニティデザインの原則
コミュニティの知識創造能力を産み出すために、集団の知の陥穽に陥らないように、注意深くマネジメントする必要がある。ゲームコミュニティではあるが、多くの実績をもつキムは、オンラインゲームコミュニティのデザインのための原則を12条にまとめている。
  1. コミュニティの目的を定義する
  2. (特に、熟練ユーザのために)区別された集合場を作る
  3. メンバー間の豊富なコミュニケーション手段を揃える
  4. プレイヤーのランキングが明示できるようにする
  5. メンバープロファイルをこまめに更新する
  6. メンバーがオンラインで連絡できるホスト役の人間がいるようにする
  7. 新しいメンバーへのガイドを提供する
  8. 意欲的なメンバーがコミュニティのリーダーシップをとる機会を提供する
  9. メンバーが作り出したサブグループをサポートする
  10. メンバー間の争いを予測し、それに備える
  11. 定期的に開催されるイベントをもつ
  12. 実世界における時間経過がわかるようにする

(以上、西田豊明ら13「社会知デザイン」「マクロレベルの社会知(総論):コミュニティの理解と支援の方法論」より)

参考文献

  1. Nicholas Ind, Oriol Iglesias, Majken Schultz, "Building Brands Together: Emergence and Outcomes of Co-Creation", California Management Review, Vol. 55, No. 3, Spring 2013, pp. 5-26
  2. 桶谷 功(著)「インサイト」(2005)ダイヤモンド社
  3. 西尾チヅル(編著)竹内淑恵、野村千佳子、木村純子、芳賀麻誉美、白井美由里、清水聡子、戸谷圭子、井上淳子「マーケティングの基礎と潮流」(2007)八千代出版
  4. C. K. Prahalad and V. Ramaswamy(著)有賀裕子(訳)一條和生(解説) 「コ・イノベーション経営 価値共創の未来に向けて(The Future of Competition: Co-Creating Unique Value with Customers (Boston, MA :Harvard Business School Press, 2004)」(2013)東洋経済新聞社
  5. 和田充夫・新倉貴士(編)懸田豊、恩蔵直人、三浦俊彦、松下光司、久米勉、土橋治子、田嶋規雄、碇朋子、渋谷覚、諏訪晴美、駒田純久「マーケティング・リボリューション」(2004)有斐閣
  6. 青木幸弘(編著)徳山美津江、四元正弘、井上淳子、菅野佐織、宮澤薫(著)「価値共創時代のブランド戦略」(2011)ミネルヴァ書房
    ブランド論の変遷からはじまり、価値と関係性という2つのキーワードを主軸に最新の研究成果まで、本書一冊で一通り学べるようになっているブランド論の良書です。内容的にはまだ新鮮で改訂は不要と思います。ぜひ、このままのかたちで重版をお願いします。
  7. 和田充夫、恩蔵直人、三浦俊彦(著)「マーケティング戦略(第4版)」(2012)有斐閣アルマ
  8. 西川英彦、金雲縞、水越康介「ネット・コミュニティにおけるアバター効果の考察:日韓アバターサイトの事例分析」Vol.4 立命館ビジネスジャーナル(2010年1月)http://www.ritsbagakkai.jp/pdf/b004_02.pdf
  9. 藤本隆宏、高橋伸夫、新宅純二郎、阿部誠、粕谷誠(著)「リサーチマインド 経営学研究法」(2005)有斐閣アルマ
  10. Ronald A. Finke, Thomas B. Ward and Steven M. Smith(著)小橋康章(訳)「創造的認知ー実験で探るクリエイティブな発想のメカニズムー(CREATIVE COGNITION Theory, Research and Applications (1992)」(1999)産業図書
  11. 白根英昭「エスノグラフィック・マーケティング(Ethnographic Marketing)」マーケティングこそすべて」(Harvard Business Review)(2010, October)ダイヤモンド社
  12. Scott Cook「インテュイット 無償の貢献を引き出すビジネスモデル(The Contribution Revolution Letting Volunteers Build Your Business)」:DIAMONDハーバードビジネスレビュー「優位の教訓」(Harvard Business Review)(2008, December)ダイヤモンド社
  13. 西田豊明、角康之、松村真宏(共著)人工知能学会(編集)「社会知デザイン」(2009)オーム社

マネジメントダイバー 第08回(その3) 2014.06.04

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